GMのキャデラックは、高級車のトップブランドとして古くから日本でも絶大なネームバリューを誇っている。しかしこれまで日本に導入されていたモデルは、いずれもいかにもアメリカンなサイズと乗り味で、限られたキャデラックファンを中心に愛用されていたに過ぎなかった。北米市場の好みに合わせたクルマ作りが、世界の高級車の趨勢と離れてしまった感があるのは否めないところだろう。
一方、自動車メーカーの国際的な再編成もひと段落した感じで、フォードはジャガーやボルボを、クライスラーはダイムラークライスラーとなってメルセデスベンツといった高級車ブランドを手に入れた。そんな中にあって世界最大規模を誇るGMは高級車ブランドが手薄。そこで自らが持つネームバリューの高いキャデラックを世界に通用するプレミアムブランドにしようと心に決めたのだ。
今回紹介するCTSは、そうした新世代キャデラック創成のためのトップバッターとなる新型車である。ボディサイズは全長4850mm×全幅1795mm×全高1460mm。既存モデルから較べるとずいぶんとコンパクトだが、この事からもキャデラックが国際商品になろうとしている事を強く感じさせる。ちなみにこの大きさは、メルセデスベンツEクラスなどとほぼ同クラスと考えて良い。
スタイリングはご覧のようなシャープな線と面を組み合わせた精悍なもの。「アート&サイエンス」と呼ばれるこのデザインは、今後発表される新型車にも継承され、キャデラックのあたらしいトレンドとなる模様だ。こうした明確な個性の主張は高級車のみならず、クルマ作り全般を通してとても大切だと思う。
CTSは駆動方式も一新している。従来のキャデラックはFFが主流だったが、CTSはFRで、専用のプラットフォームを一から新開発しているのだ。キャデラックはこのクルマをドライバーズカー(運転手付きではなく自ら運転を楽しむクルマ)と定義しており、そのためには前後の重量配分を理想に近く出来、コントロール性にも優れるFRを採用したと説明している。
もはやFR=高級、FF=大衆的という棲み分けはあまり意味を持たないが、駆動と操舵を別々のタイヤが受け持つFRはステアリングフィールひとつ取ってもナチュラルに出来るから、これは大きな決断と言って良いだろう。今後もキャデラックはFR中心のクルマ作りに切り替えていく模様のようだ。
搭載エンジンは2600ccと3200ccの2種類のV型6気筒。これはオペルがベクトラなどにすでに搭載しているユニットである。組み合わされるトランスミッションはGM製の5速AT(本国にはゲトラグ社製のMTもあるようだが)で、最近採用例が多いマニュアルモードの設定は無く、直線シフトの7ポジションとなっている。
価格は3.2が595万円、2.6が495万円。いずれも本革シートやBOSE製のオーディオなどを標準で備えるなど装備面は充実している。ハンドルは全モデルで右と左が選べ、右ハンドルではウインカーレバーも右に移されるなど、ローカライズもこれまでのアメリカ車には見られなかったほど真面目だ。この辺にもGMの気合いが伺える。ちなみに3.2はDVDナビを標準装備。2.6は40万円でのオプション設定となっている。