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【Vol.17】環境一番、楽しさ二番(2003/11/7更新)

 

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クルマが楽しかったのは60年代まで

話題の新型トヨタ・プリウス、私も買っちゃいました。凄い売れ行きらしくてご同慶の至りではありますが、なんだかアッという間にハイブリッドなんて違和感なくなっちゃったみたいな日本ではありますね。
でも、最近でこそハイブリッドだとか次世代エネルギーだとか騒いでますけど、私に言わせりゃ、こんな流れは30年以上も前に始まってて、今やっとその結果が出始めたわけ。アメリカのマスキー上院議員が排ガス規制を提唱して、その名も「マスキー法」ができたのが70年代の初め。一方これもアメリカのラルフ・ネイダー弁護士が安全性の問題を取り上げて、いろいろ安全基準が厳しくなり始めたのも同じころ。あれでクルマ界の空気、いっぺんに変わっちゃいました。だから私、いつも言ってんです。「本当に個性豊かでおもしろかった時代は60年代で終わってる」って。
ま、それはともかく、クルマの排ガスがどれほどきれいになったか、今さらハイブリッドに乗るまでもなく実感させられること、ずいぶんあります。

嗚呼懐かしき「じどうしゃ」のかほり

思い起こせばウン十年前、まだ私が可愛い坊やだったころ(って、自分で褒めてどうする)、JR中央線………じゃなくて当時は国鉄でしたが、西荻窪駅は高架じゃなくて、地面に上り下り2 本の線が這ってました。駅のホームも2 本あって、その間を跨線橋(すべて木造)が結んでました。そこに登ると、1km ぐらい向こう、間に善福寺川を挟んだ青梅街道を行くクルマが見えることもありました。今じゃマンションがびっしり建っちゃって見通しなんか効きませんけどね。
あのころは「じどうしゃ」ってだけで珍しかったから、その日に目撃したのは全部きっちり覚えてました。たまに家の前をクルマが通ると「あっ、自動車だ!」とか叫んで飛びだして、排ガスの残り香を胸いっぱい吸い込んだりしたもんです。今あらためて考えてみりゃ毒ですよね。とにかくクルマには独特の匂いがあったわけ(今でもディーゼルにはありますが)。
最近も、そんな経験しました。ルノーの本社に行った時のことだけど、今ニッサンといっしょじゃないですか、だから日本からの記者団なんて大歓迎なわけ。そこでルノーの博物館を見学したら、そこのクルマを10台連ねてホテルまで送ってくれるって話になったんですよ。50年も前のセルタカトルだとか、聞いたことない名前でしょ。もうフランス車マニアなら魂と交換しても後悔しないぐらいの名車なんです。もちろんメーカー自身の博物館だから、どれも新車当時のコンディションそのままバチバチに修復してあります。
で、そんな車列で夜のパリに繰り出したんだけど、はっきり言って前のクルマの排ガスがクセーのなんの。目はしょぼしょぼするし喉はひりひりするし、「ああ、昔はこんなの喜んで嗅いでたんだなあ」と、我ながら呆れちゃいましたよ。

30年アクセル踏んだ代償?

もし30年前に排ガス規制が始まらなくて、あの当時のままクルマの数だけこんなに増えたら、東京都民なんか間違いなく全員喘息で倒れてますね。だって、日本の四輪車保有台数が1000万台を突破したのが1968年で、その時は新聞でも大きな記事になるぐらいの出来事だったのに、それから35年後の今は全国で7400万台なんでしょ、汚い排ガスが7.4 倍になってたらと想像するだけで恐ろしいことです。
そういえば日本でも排ガス規制が始まったころ、名前でいうと48年規制とか50年規制とか段階があったんですが、それまでギンギン突っ張ってたスポーツタイプのエンジンがどんどん元気なくなっちゃったんです。私たちマニアとしてはこの世の終わりみたいな事態だったんですが、ある有名な設計者が言いましたもんね、「これ、やんなきゃいけないんです。やらなかったら、みんな喘息でアウトですよ」って。専門家は、ああいう規制が始まる前から、ちゃんと知ってたんですよ。プリンス自動車(後にニッサンと合併)だって1960年代の初めに排ガス分析装置を導入してたんですから。まあ、その時は公害対策より性能向上のための排ガス研究だった面もありますけど。
そんなこんなの技術の流れとか、各地で提起された公害訴訟とかいろいろあったあげく、今のような形になったわけですから、私たちクルマ好きのマニアも、もう少し真剣に考える必要はありそうですね。よく聞かれるセリフですが、「環境問題も大切だけど、やっぱりクルマは走って楽しくなきゃねえ」ってあるでしょう。でも「○○だけど」の順番、間違ってますよ。「楽しさも大切だけど、やっぱり環境問題が一番だよね」でしょう、これからは。
そんなわけで、30年以上もアクセル踏みまくってきた私も、ちょっと手遅れかもしれませんが、罪滅ぼしの意味もあって、せっせとハイブリッドに乗ってるわけです。
熊倉所長が可愛い坊や時代を思い出したというセルタカトルの写真はさすがに用意できなかったので、ほぼ同じ世代のルノー「Juvaquatre」で勘弁してやってください。写真でご覧いただいてお分かりになると思いますが、ともかく、こんな時代のクルマなワケです。




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