ゴールデンウィークって、どこがゴールデンなんだかわかりませんが、やっぱり皆さん、どこか出かけたりするんですか。私はあんまりお薦めしませんが。渋滞ひどいしね。それも普段の仕事日の渋滞と違って、不慣れなドライバーばかりだから要領悪すぎで見てらんないし、トホホな接触事故も多いし。
そこで、もしゴールデンウィークにずっと家にいて奥さんに邪険にされずにすんだら、とっても時間の余裕、できますよね。だったら本を読みませんか。週刊誌とかハウツー本じゃなく、ちゃんとズシンとくるのを。
最近あるクルマ雑誌から「GWに読みたい本、推薦してください」と言われて本棚を見渡したら、目に止まったのがこれ、『マン・マシンの昭和伝説』(前間孝則著・講談社刊)。上下2巻で合計5000円ほど、重ねると厚さ7cm になります。初版は10年以上も前ですが、たぶん粘り強いロングセラーになっていると思います。急いで本屋さんに頼めば、滑り込みでGWに間に合うかも。
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なんでこれを思い出したかというと、西荻窪の地元に関係ある部分もちょっと出て来るからです。全体の基本は戦中から戦後にかけての技術者たちの足跡なんですが、それって、今の日本が世界屈指の自動車生産王国になった基礎ですよね。いろいろ頑張って優秀な軍用機を設計しながら、敗戦で空への夢を立たれた技術者たちが、戦後ドドッと自動車産業に移ったのが、やがてここまで育ったんだから。
よそから聞いた話ですが、戦前の大学では、機械科を卒業して航空機メーカーに就職するのが一番のエリートで、次が造船、その次が自動車だったんだって。クルマの設計やりたいなんて言うと、「な〜んだ」とかバカにされたなんて、読んだ記憶もあります。やっぱり軍国日本だったんですね。
そういうわけで、この本にも飛行機から自動車に転向した技術屋さんがたくさん登場するんですが、その中に中村良夫さんという人がいます。もう故人ですが、1960年代の第1期ホンダF1活動でチーム監督として世界を転戦した人です。けっこう鼻っ柱が強くて、あのカリスマ本田宗一郎氏ともたびたび衝突したとか、相当なサムライでもあります。ご本人は小柄で痩せていて、飄々とした感じなんですけどね。
その中村さんは戦時中は陸軍の技術将校として、中島飛行機に配属されてました。軍用機の開発に関して、メーカーに軍の意向を伝達したりする役目です。あのころは国立大学の工学部を卒業したってだけで超エリートですから、そういう学問力でいきなり少尉にされちゃって、軍刀ぶらさげてたんですね。
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一口に中島飛行機といっても軍需産業の大物ですから巨大で、全国に大小無数の事業所があって、最盛期には従業員総数14万人だったというから、今のトヨタより大規模だったわけ。その中で中村さんが常駐していたのが本社つまり荻窪だったんです。名前は荻窪だけど、実際には西荻窪に近いんですけどね。ほら、青梅街道の荻窪警察署、あるじゃないですか。その並びにニッサンの販売店があって、その向こう側が工事中みたいなフェンスになってるとこ。今は公園というか空き地というかですが、あそこが元は中島飛行機で、その後プリンス自動車、そして日産との合併後は日産荻窪工場だった跡地です。まだあそこに工場があったころは、社員はJR中央線の荻窪駅から関東バスに乗るか、西荻窪駅からバスでもいいけど健康のため15〜20分歩くかが通勤ルートでした。えらいローカルな話題ですみません。
そういうわけで、中村さんが荻窪に詰めていたころはもう戦争も敗色濃厚だったから、東京なんかバンバン空襲されるわけ。もちろん中島飛行機も目標ですよね。その割には西荻窪の町は焼けてないんです。主に工場めがけて爆弾を落としてたから。でも下町方面は丸ごと焼き払うのが目的だから、豪雨みたいに焼夷弾(ナパーム弾)を降らせるんですよ。中に爆薬じゃなくゼリー状のガソリン詰めた筒なんで、木造だらけの日本の町なんか焚き火みたいに燃えちゃうわけ。その最大のが1945年(昭和20年)3 月10日の東京大空襲だったんだけど、「マン・マシンの昭和伝説」には、赤々と燃え上がる東の方を、荻窪で木に登って見ていた中村さんの体験談も登場します。
あのころは見えたんですよ、そんなに遠くが。高い建物なんか少なかったし。そういえば西荻窪の私の家でも、庭の木に2 メートルほど上がれば、西南西に富士山がよく見えましたもん。
ま、だからどうしたってわけじゃないんですが、自分の町とかよく知ってる場所とか出て来ると、けっこう熱心に読んじゃうじゃないですか。そういうわけで「マン・マシンの昭和伝説」、内容よく覚えちゃったんですが、そうでなくても、これ読むと街を行く日本車の見え方、確実に変わります。お薦めです。
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| 西荻窪・桃井3丁目交差点のところにある日産ディーラー近辺が、中島飛行機の本社があったあたり。最近は建設中のマンションなどが多く、当時の面影はほとんど残っていない……。 |
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